政府は2008年12月期から2012年3月期までの期間、銀行の自己資本比率規制を緩和すると発表した。
株安から続く貸し渋り・貸し剥がしへの悪循環を防ぐためだ。
日本の銀行は、企業との持ち合いなどで大量の株式を保有している。
金融危機にともなって急激に株安が進む局面では、決算で多額の株式評価損の処理をしなければならない。
自己資本から評価損を差し引く現行規制のままでは、自己資本比率が大きく低下してしまう。
もし大手行8%、地銀4%という健全性の目安を下回るとなれば、金融庁の行政処分の対象になってしまう。
これを防止するため、銀行が同比率維持のために貸出残高圧縮を行い、中小企業などの資金繰りに大きな影響を与えるのではないかと懸念されていた。
今回の規制緩和では、地銀に対して、株式・債券などといった保有る有価証券に評価損が出ても自己資本から差し引かなくて良いとする。
また、大手行については、国際ルールとの整合性を考慮し、株式評価損の扱いは変えないが、国債・地方債の評価損は自己資本から差し引かなくても良いとする。
金融界からは、こうした規制緩和を歓迎する声もある。
ただ、企業から強引な資金回収を行う貸し剥がし抑制には一定の効果はあっても、融資拡大による貸し渋り解消までの効果は期待できない。
さらに、市場では株式や債券の評価損を差し引いた自己資本比率で銀行の健全性を判断するものと見られており、金融不安解消効果も限定的となりそうだ。