政界きっての財政再建論者として知られる与謝野馨財務・金融・経済財政担当相が、大規模な財政出動を示唆する発言を繰り返し、政界に波紋を広げている。
与謝野氏は10日の閣議後会見で「長い間、財政規律を守ることをずっとやってきた。
財政規律派の仕事としては、昨年末の中期プログラム策定でとりあえず一時、公演中止だ」と述べ、財政規律路線の凍結に言及。
「経済回復のためにはあらゆる政策手段をとって行動する」と強調した。
政府は2009年度補正予算の編成も視野に、水面下で大規模な追加経済対策の策定を進めている。
与謝野氏の発言はその財源確保のため、赤字国債の大規模発行も辞さない姿勢を示したものと受けとられ、債券などマーケットはさっそく反応。
政界でも賛否両論が渦巻いた。
その急先鋒が自民党税制調査会の重鎮で、財政規律派を自認する伊吹文明・元財務相。
与謝野氏の言動に「ちょっと困った発言だ」と苦言を呈し、「堂々と国債を発行して財政対策をやるのは当たり前。
景気を良くして国債を償還するのが、財政規律派の基本的な姿勢だ」とかみついた。
政界の関心は追加経済対策の中身に移っており、「真水で20〜30兆円規模の対策が必要だ」(閣僚経験者)との声が上がるなど、早くもぶんどり合戦の様相を呈しつつある。
閣内では与謝野氏以外、無節操な財政出動の歯止め役はいないだけに、「変節」したとも見える言動に我慢ならなかったようだ。