アメリカの財務会計基準審議会が、時価会計を緩和する方針を打ち出した。
有価証券の時価評価免除の条件について、これまであいまいだった定義を整理。
現在も金融商品の市場の状態が、「通常の市場でない場合」は時価ではなく理論値で評価できるが、その定義を「市場が活発でない場合」、「取引が投げ売りである場合」と明確化した。
定義があいまいなまま運用されていたため、投げ売り状態の金融商品でも市場価格で時価評価される傾向にあり、複雑な金融商品を大量に保有する金融機関は多額の評価損計上を余儀なくされてきた。
今回の基準緩和で、投げ売り状態の有価証券でも理論値で評価できるようになり、業績の底上げにつながる。
もう一点の緩和は、減損の範囲の限定だ。
一時的ではない減損を行う場合、これまでは価値下落分の評価損を減損処理しなければならなかった。
今回は主に社債などを対象に、評価損を信用リスクと流動性リスクに分け、信用リスク分のみを損益計算書に反映させるかたちとした。
流動性リスクは、米国会計基準独自の「その他包括利益」として資本に直入する。
つまり、自己資本への影響はこれまでと同じだが、当期損益への影響は小さくなる格好だ。
今年3月期決算から適用されているが、どれほどの業績底上げ効果があるかはまだ未知数。
日本の金融庁は「とりあえず様子見」と、追随する気配はない。
米国会計基準を導入する日本企業にも適用されるが、対象となる複雑な金融商品の保有量が少なく、メリットはほとんどなさそうだ。