菅直人首相が政府税調に対して出した、雇用促進税制の検討を求める指示が官僚の間で波紋を広げている。
その一節は官邸が主導して盛り込んだもので、どこかの官庁が要望したわけではなかったからだ。
雇用促進税制は、雇用の増加に応じて企業の税負担を軽減する措置。
官邸側は仙谷由人官房長官が主導して、菅首相が言う「雇用、雇用、雇用」を政策に落とし込もうとした。
新たな減税となるため、官邸の動きを察した財務省は直前に猛反発したが押し切られ、財務省幹部は「青天のへきれき」と吐き捨てた。
経産省も決して積極的な姿勢ではない。
経産省は法人税率の5%引き下げを年末に向けての税制改正作業の「大玉」としたいため、余計なモノは抱えたくないからだ。
厚生労働省にしてみれば、すでに同じような趣旨の補助金を実施しており、政策が重複してしまうので戸惑いがある。
政府税調に雇用促進税制を検討するプロジェクトチームが設置されたとしても、このままでは推進役が不在になる。
首相指示には「措置を平成23年度税制改正で講ずる」とあり、同じ指示でも「同23年度予算編成・税制改正作業の中で検討して結論を得る」となっている法人税率引き下げよりも期限が前。
一から検討するには残された時間は少ない。
もっとも、新成長戦略実現会議そのものが、党代表選を控えていた菅首相がリーダーシップを発揮する姿をアピールするための場だった、との見方が強く、「2回目はないのでは」との冷めた声も官僚から聞こえる。
狙いとは逆に、菅首相の霞が関での指導力の低さを浮き彫りにしてしまった。