揮発油(ガソリン)税の暫定税率をめぐるごたごたで、世界的にも例のない、いびつな税制が誕生することになった。
原油高騰時に課税の一部を停止する、いわゆる「トリガー条項」がそれで、政府が2月初旬に提出する税制改正関連法案に盛り込まれる見通しだ。
トリガー条項は、民主党が昨年12月、石油価格の安定を理由に政府に暫定税率水準の維持を要望した際、代替措置として創設を求めた。
価格の変動に応じて課税を停止・復活する仕組みは、関税では存在するものの、内国税では例がない。
具体案作りを課された財務省は「そんなことが法的に可能なのか」と頭を抱え、内閣法制局と実現を探ってきた。
そんな苦心の末にまとまったのが、総務省小売物価統計でガソリン価格が3カ月連続で160円を上回った場合、ガソリンと軽油の上乗せ課税を停止し、その後同期間、130円を下回った場合は課税を復活する仕組み。
ガソリンスタンドの手持ち品の還付・課税など「発動時の混乱を最小限に防ぐ」(同省)よう最大限配慮した。
とはいえ、制度の特性上、発動間際に買い控えが広がったり、業界側が意図的に価格操作を行う可能性は残る。
「党要望とはいえ、かなり異形の仕組み。できれば抜かずの宝刀で済ませたい」。
政府税調幹部は本音を漏らす。
トリガー条項の廃止には根拠の上乗せ課税自体をなくす必要があり、その存在が地球温暖化対策税の導入論を後押しする皮肉な「副作用」をもたらしつつある。